1792年アメリカ大統領選挙
1792年11月1日から12月4日まで(1792年の連邦法が定める、選挙人が投票する12月第1水曜日=1792年12月5日の34日前から1日前までの窓)に15州で選挙人が任命・選出された。ジョージ・ワシントンが選挙人132人全員の第1票を得て満場一致で再選された。第2票(副大統領票)は現職副大統領のジョン・アダムズが77票で次点となりそのまま副大統領に留任し、ほかにニューヨーク州知事ジョージ・クリントンが50票、トーマス・ジェファーソンが4票、アーロン・バーが1票を得た。前回1789年の選挙からの変化点は、(1) バーモント(1791年3月に連邦加入)とケンタッキー(1792年6月に連邦加入)が初めて選挙人を送ったこと、(2) 前回選挙人を任命できなかったニューヨーク州が今回は12人全員を任命したこと、(3) ノースカロライナ・ロードアイランドの両州が合衆国憲法を批准済みで今回から参加したこと、の3点である。15州のうちコネチカット・デラウェア・ジョージア・ニュージャージー・ニューヨーク・ノースカロライナ・ロードアイランド・サウスカロライナ・バーモントの9州は州議会(またはこれに準じる統治機関)が一般投票を経ずに選挙人を選び、残るケンタッキー・メリーランド・マサチューセッツ・ニューハンプシャー・ペンシルベニア・バージニアの6州は住民投票で選挙人を選んだ(方式は州により異なり、ケンタッキー・バージニアは選挙区制の直接選出、メリーランド・ペンシルベニアは州全体の大選挙区制、ニューハンプシャーは州全体での過半数得票制+決選投票、マサチューセッツは選挙区ごとの過半数得票制+不足分を議会が補充、という制度だった)。この回についても、NARAおよび米国勢調査局(Series Y79-83)の集計にはこれら6州の住民投票の得票数が記録されておらず、全国的な一般得票の集計はできない。
州別の選挙人票の内訳(15州・候補者5名・合計264票=選挙人132人×2票)は、NARA(米国国立公文書館)の回次ページ(https://www.archives.gov/electoral-college/1792 )に掲載の州別表と、米国勢調査局『Historical Statistics of the United States, Colonial Times to 1970』Part 2 Series Y79-83「Electoral and Popular Vote Cast for President, by Political Party: 1789 to 1968」(誌面1074ページ)の2出典で完全に一致することを確認した(候補者ごとの合計=ワシントン132・アダムズ77・クリントン50・ジェファーソン4・バー1、州ごとの合計もNARAの州別表とすべて一致)。Series Yの1792年行もPopular(一般得票)欄はワシントン・アダムズ・クリントンの3名分がいずれも空欄(罫線のみ)であり、ジェファーソン・バーの2名は政党(Political party)欄も空欄になっている。政党について、NARA本文は「President: George Washington [Independent]」「Main Opponent: John Adams [Federalist]」と明記する一方、次点以下(クリントン・ジェファーソン・バー)には政党を付していない。同じくSeries Yの表でもクリントンのみ「Democratic-Republican」の党名が付き、ジェファーソン・バーは空欄だった。ジェファーソン・バーの政党は、Wikipedia英語版「1792 United States presidential election」の選挙結果インフォボックス(出典として同記事は Sharp, James Roger (1993) "American Politics in the Early Republic" 等の学術文献を付す)が両者とも Democratic-Republican としており、当時クリントン・ジェファーソン・バーの3名がいずれも反連邦派(のちの民主共和党)の陣営として一体的に選挙運動を展開していたことは同記事本文(「Born out of the Anti-Federalist faction...the Democratic-Republican Party...George Clinton, the Governor of New York」等の記述)からも裏付けられるため、本ページはジェファーソン・バーも民主共和党として扱う(NARA・Census両方が政党を明記したクリントンと同じ扱いにそろえた)。ワシントンの政党は、Census(Series Y79-83)表では「Federalist」と記載されているが、本ページはNARAの明記「[Independent]」を優先し無所属として扱う(1789年の前例・依頼者向け方針と同様、ワシントン自身は生涯特定の政党に所属しなかったという歴史的通説とも整合する)。/州ごとの選挙人選出方式は The Green Papers 「By whom U.S. PRESIDENTIAL ELECTORS were appointed」(https://www.thegreenpapers.com/Hx/ByWhomElectorsWereAppointed.phtml )の一覧表・脚注と、Wikipedia英語版「1792 United States presidential election」の Electoral college selection 節(学術文献を出典とする表)の双方で確認した。両者は完全に一致しており、コネチカット・デラウェア・ジョージア・ニュージャージー・ニューヨーク・ノースカロライナ・ロードアイランド・サウスカロライナ・バーモントの9州は州議会が選挙人を直接任命し一般投票を伴わない(Wikipedia本文「Nine of the 15 states...did so by a vote of the state legislature」)。残り6州(ケンタッキー・メリーランド・マサチューセッツ・ニューハンプシャー・ペンシルベニア・バージニア)は「the remaining six employed some form of popular vote」として住民投票を伴う方式に分類されている。マサチューセッツは大選挙区(8選挙区中2つは5人・2つは3人を選出)で各選挙区の過半数得票者がそのまま選挙人に選ばれ、過半数に達する候補が不足した場合に限り州議会(General Court)が残りの選挙人を任命する制度(The Green Papersの脚注・Wikipediaの選出方式表とも同旨)で、実際に1792年はこの議会補充が発動した(Tufts大学「A New Nation Votes: American Election Returns 1787-1825」所収のマサチューセッツ中部選挙区の記録=トーマス・ドーズが過半数に届かず後に議会が選出、との記載)。この点は1789年のニューハンプシャー・マサチューセッツ(住民投票が候補の絞り込みに留まり議会が全選挙人の最終決定権を持つ)とは制度が異なり、1792年のマサチューセッツは過半数を得た候補についてはその時点で住民投票のみで選挙人が確定し議会の関与が無い。Wikipedia本文が明示的にマサチューセッツを「6州」(住民投票州)側に分類していることとも整合するため、本ページはマサチューセッツをstate_status空欄(住民投票州)として扱い、議会補充の制度については州の行のnoteに明記するにとどめる。一方、1792年のニューハンプシャーは前回と異なり過半数に届かない場合の措置が「決選投票(runoff、上位得票者による再選挙)」に変更されており(The Green Papersの脚注「for this Presidential Election, the People were to appoint the State's Electors; where Elector-candidates failed to gain a majority of the total vote, there would be a second election...」)、議会による選出は制度上存在しないため、ニューハンプシャーもstate_status空欄とする。ケンタッキー・バージニアは、州を選挙区に分け各選挙区の住民投票で選挙人1人を直接選ぶ制度(バージニアは21選挙区・ケンタッキーは4選挙区。バージニアはWikipedia英語版「1792 United States presidential election in Virginia」本文「Virginia was divided into 21 electoral districts」、ケンタッキーは同様の州別記事本文「the state was divided into four electoral districts with one elector each」による)。メリーランド・ペンシルベニアは州全体を1つの選挙区とする大選挙区制の住民投票(Wikipedia選出方式表「each elector chosen by voters statewide」)。ペンシルベニアはWikipedia本文「a Federalist electoral slate pledged to Washington and Adams was selected, although one elector voted for Washington and Clinton」の記述どおり、NARA州別表でもアダムズ14票・クリントン1票(ワシントン15票のうち1人がクリントンにも投票)という分裂が見られる。/このほか住民投票のあった6州について、各州の一般得票(住民投票の得票数)そのものはNARA・Census Series Yのいずれにも掲載が無く、本ページが検算に用いる一次資料には全国はもとより州単位の一般得票の集計も現れないため、popular_vote=no_national_tallyとし、全州でvotes欄を空欄にした(他の資料には州によって部分的な集計が残るとの記述もあるが、当サイトが検算に用いる一次資料には現れないため空欄のままとする)。/vote_date_from=1792-11-01・vote_date=1792-12-04は、1792年連邦選挙法(1792年3月1日制定)が定める「選挙人が投票する日=12月の第1水曜日」の34日前から1日前までという規定を、1792年12月の第1水曜日(1792年12月5日)から逆算して機械的に計算した値(world_content.pyのlaw_basis=act_1792の検証式と同一の計算式)。
選挙人票の結果
州ごとの結果
候補者別の結果
| 候補者 | 政党 | 選挙人票 | 当落 |
|---|---|---|---|
| ジョージ・ワシントン George Washington州別内訳(コネチカット9・デラウェア3・ジョージア4・ケンタッキー4・メリーランド8・マサチューセッツ16・ニューハンプシャー6・ニュージャージー7・ニューヨーク12・ノースカロライナ12・ペンシルベニア15・ロードアイランド4・サウスカロライナ8・バーモント3・バージニア21=合計132)はNARA(米国国立公文書館)の回次ページと米国勢調査局『Historical Statistics of the United States, Colonial Times to 1970』Part 2 Series Y79-83(誌面1074ページ)の2出典で一致することを確認した。当時は成文化された政党が存在せず、本ページはNARAの明記「[Independent]」に合わせて「無所属」として扱う(米国勢調査局Series Yの表では「Federalist」と記載されているが採用しない)。選挙人132人全員の第1票を得て満場一致で再選された。 | 無所属 | 132 | 当選 |
| ジョン・アダムズ John Adams州別内訳(コネチカット9・デラウェア3・メリーランド8・マサチューセッツ16・ニューハンプシャー6・ニュージャージー7・ペンシルベニア14・ロードアイランド4・サウスカロライナ7・バーモント3=合計77)はNARA(米国国立公文書館)の回次ページと米国勢調査局『Historical Statistics of the United States, Colonial Times to 1970』Part 2 Series Y79-83(誌面1074ページ)の2出典で一致することを確認した。NARA本文が「Main Opponent: John Adams [Federalist]」と明記しており「連邦党」として扱う。選挙人票2位のため、当時の制度(憲法修正第12条より前)によりそのまま副大統領に留任した。 | 連邦党 | 77 | 副大統領 |
| ジョージ・クリントン George Clinton州別内訳(ジョージア4・ニューヨーク12・ノースカロライナ12・ペンシルベニア1・バージニア21=合計50)はNARA(米国国立公文書館)の回次ページと米国勢調査局『Historical Statistics of the United States, Colonial Times to 1970』Part 2 Series Y79-83(誌面1074ページ)の2出典で一致することを確認した。NARAは政党を明記しないが、米国勢調査局Series Yの表は「Democratic-Republican」と明記しており「民主共和党」として扱う。ニューヨーク州知事として反連邦派(民主共和党)陣営から副大統領候補に位置づけられた(Wikipedia英語版「1792 United States presidential election」本文)。 | 民主共和党 | 50 | 落選 |
| トーマス・ジェファーソン Thomas Jefferson州別内訳(ケンタッキー4=合計4)はNARA(米国国立公文書館)の回次ページと米国勢調査局『Historical Statistics of the United States, Colonial Times to 1970』Part 2 Series Y79-83(誌面1074ページ)の2出典で一致することを確認した。NARA・米国勢調査局Series Yのいずれも政党を明記していないが、Wikipedia英語版「1792 United States presidential election」の選挙結果インフォボックスはDemocratic-Republicanとしており、当時の反連邦派(民主共和党)陣営の中心人物だったという歴史的通説と整合するため「民主共和党」として扱う。 | 民主共和党 | 4 | 落選 |
| アーロン・バー Aaron Burr州別内訳(サウスカロライナ1=合計1)はNARA(米国国立公文書館)の回次ページと米国勢調査局『Historical Statistics of the United States, Colonial Times to 1970』Part 2 Series Y79-83(誌面1074ページ)の2出典で一致することを確認した。NARA・米国勢調査局Series Yのいずれも政党を明記していないが、Wikipedia英語版「1792 United States presidential election」の選挙結果インフォボックスはDemocratic-Republicanとしており「民主共和党」として扱う。 | 民主共和党 | 1 | 落選 |
この回は州議会が選挙人を選んだ州と一般投票で選んだ州が混在しており、全国の得票集計が成り立ちません。選挙人票と州ごとの結果は収録しています。
州ごとの一覧
| 州 | 候補者 | 政党 | 得票数 | 選挙人票 |
|---|---|---|---|---|
| コネチカット州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 9 |
| コネチカット州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョン・アダムズ | 連邦党 | — | 9 |
| デラウェア州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 3 |
| デラウェア州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョン・アダムズ | 連邦党 | — | 3 |
| ジョージア州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 4 |
| ジョージア州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・クリントン | 民主共和党 | — | 4 |
| ケンタッキー州 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 4 |
| ケンタッキー州 | トーマス・ジェファーソン | 民主共和党 | — | 4 |
| メリーランド州 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 8 |
| メリーランド州 | ジョン・アダムズ | 連邦党 | — | 8 |
| マサチューセッツ州 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 16 |
| マサチューセッツ州 | ジョン・アダムズ | 連邦党 | — | 16 |
| ニューハンプシャー州 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 6 |
| ニューハンプシャー州 | ジョン・アダムズ | 連邦党 | — | 6 |
| ニュージャージー州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 7 |
| ニュージャージー州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョン・アダムズ | 連邦党 | — | 7 |
| ニューヨーク州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 12 |
| ニューヨーク州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・クリントン | 民主共和党 | — | 12 |
| ノースカロライナ州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 12 |
| ノースカロライナ州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・クリントン | 民主共和党 | — | 12 |
| ペンシルベニア州 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 15 |
| ペンシルベニア州 | ジョン・アダムズ | 連邦党 | — | 14 |
| ペンシルベニア州 | ジョージ・クリントン | 民主共和党 | — | 1 |
| ロードアイランド州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 4 |
| ロードアイランド州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョン・アダムズ | 連邦党 | — | 4 |
| サウスカロライナ州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 8 |
| サウスカロライナ州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョン・アダムズ | 連邦党 | — | 7 |
| サウスカロライナ州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | アーロン・バー | 民主共和党 | — | 1 |
| バーモント州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 3 |
| バーモント州州議会など、州全体で統一的な一般投票を行わない手続きで選挙人が選ばれました。 | ジョン・アダムズ | 連邦党 | — | 3 |
| バージニア州 | ジョージ・ワシントン | 無所属 | — | 21 |
| バージニア州 | ジョージ・クリントン | 民主共和党 | — | 21 |